日帰り手術のメリットと実際のながれ
入院の必要がなく、仕事や家事を休まないですむ日帰り手術。下肢静脈瘤でも日帰り手術を行う施設が多くなり、手術を受けた患者さんの満足度も高いようです。日帰り手術の実際はどのようなものなのでしょうか?日本で最初に下肢静脈瘤の日帰り手術を確立した北青山Dクリニックの阿保義久 先生にお話を伺いました。
教えてくださる先生 |
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東京大学医学部 卒業、東京大学医学部 第一外科、虎の門病院 麻酔科(1993年) 東京都教職員互助会三楽病院 外科(1994年) 東京大学医学部 血管外科・腫瘍外科(1997年) 北青山Dクリニック 院長(2000年) 医療法人 DAP 理事長(2004年) 所属学会: 日本外科学会、日本血管外科学会、日本消化器外科学会、日本脈管学会、日本大腸肛門外科学会、日本抗加齢学会 |
北青山Dクリニック |
下肢静脈瘤には伏在静脈瘤、側枝静脈瘤、網目状静脈瘤、クモの巣状静脈瘤などいくつかの種類がありますが、大伏在静脈瘤や小伏在静脈瘤など手術が適応となる下肢静脈瘤で日帰り手術ができないものはありません。年齢による制限もありません。また、糖尿病や心不全など持病のある患者さんでも日常生活に支障がない程度であれば日帰り手術は可能です。ただし深部静脈血栓症を併発していたり一般的に全身状態が良くない場合は、入院管理が必要になります。
日帰り手術は患者さんの体の負担や生活の制限が少なく、生活の質(クオリテイ・オブ・ライフ)を維持することができ、医療費を抑える点でも大きなメリットがあります。入院治療が必要だった頃は、命にかかわる病気ではないということもあり、入院という負担を考えて患者さんも医療者側もなかなか治療に踏み切れず、重症化を待って治療(手術)するというのが一般的でした。以前の入院治療では切除範囲が広くなり、術後の痛みも強く、神経障害を起こす危険もありました。かつ、重症化してから治療を加えるため術後の回復期間が長期化する傾向にありました。その点、日帰り手術は治療の決断がしやすく、結果として早期に患者さんの苦痛を取り除くことができるようになりました。これも日帰り手術の大きなメリットといえます。
日帰り手術が行われる以前は、手術時間も長く、全身麻酔や入院が必要だったため、術後安静にしている時間が長く、血液のうっ滞による深部静脈血栓症という重篤な合併症が起こる危険がありました。その点、日帰り手術は手術時間が短くてすみ、術後すぐに体を動かすことでその危険は圧倒的に低くなっています。
また、血管を抜き取るストリッピング手術では、抜き取る必要のない血管はできるだけ硬化療法(硬化剤を注射する治療)で治療し、切除範囲を少なくしています。また、麻酔は静脈麻酔と局所麻酔を組み合わせて行うので全身麻酔を行う必要はありません。そのため安全性も高く、患者さんは術後数十分から1時間前後で歩いて帰ることができます。術式と麻酔方法の工夫で負担の少ない日帰り手術が可能になったわけです。血管内を焼き固めるレーザー治療は、血管を抜き取る必要がないため、さらに体へのダメージは少なく、神経障害の危険もほとんどない安全な治療法といえます。
当院の場合、手術前に一度来院していただき、診察・検査を行います。手術当日は午前11時頃に来院し、ストリッピング手術でも片脚なら午後3時頃には帰宅できます。詳細は下記の通りです。
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・血管の超音波(エコー)検査、心電図検査、血液検査など ・治療プランの作成(*深部静脈に問題が見つかった場合は時間をかけてカウンセリング) |
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ストリッピング手術の場合 ⇒翌日、4日後、7日後 レーザー治療の場合 ⇒1週間後(原則) *痛み止めとして、術後1週間ぐらいは消炎鎮痛剤が処方されます。 |
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手術は日帰りでできるようになりましたが、術後の経過観察は1年ほど必要です。再発のチェック、静脈瘤の消退などを確認します。当院では3~4週間後、3~4ヵ月後、半年後、1年後にそれぞれ一度来院していただいています。日常生活の注意としては、深部静脈を守るため、脚の筋力を落とさないように散歩を心がけたり、長時間の立ちっぱなしや太りすぎを避けることが大切です。
従来の入院治療では、一旦退院するとそれで治療は終わりと捉えられがちでしたが、下肢静脈瘤は長期にフォローする必要があり、その意味では慢性疾患と捉えていただいたほうがよいでしょう。根治的な治療は短時間でできる日帰り手術で行い、その後通院でフォローしていくという日帰り手術を軸とした治療法は、下肢静脈瘤という病気に合った治療法といえます。実際、私たちの施設で行った患者さんの満足度を聞いたアンケート調査によると、90%以上の患者さんが「満足」と答えています。